便器のパテ(ガスケット)は「ボルトで潰す」と割れます。漏水しない「体重圧着」のコツ
便器の取り付け作業で、新人が最もやりがちな失敗。
それは、「フランジパテ(Pシール・ガスケット)の潰し方が甘い」か、逆に「ボルトで無理やり潰そうとして陶器を割る」かのどちらかです。
「どのくらい潰せばいいのか?」「正解の感触は?」
これは教科書には載っていません。
今回は、水漏れも陶器割れも防ぐための、プロの「パテ圧着」の感覚を言語化します。
1. 「浮いている」状態がスタートライン
まず大前提として、パテをセットして便器を置いた瞬間、便器は床から数センチ浮いていなければなりません。
もし、置いただけで便器が床にペタリと着いてしまったら?
それは「パテが薄すぎる」か「フランジが低すぎる」証拠です。
そのまま設置すると、将来100%の確率で、隙間から汚水や臭気が漏れ出します。
「浮いている便器を、押し下げて密着させる」のが正しい手順です。
2. ボルトで引っ張るな、「体重」で潰せ
ここが最大のポイントです。
浮いている便器を床に着けるために、固定ボルトのナットをガンガン締め込んでいく人がいますが、これは絶対にNGです。
⚠️ 陶器は「締め付け」に弱い
便器(陶器)は上からの圧力には強いですが、ボルト締め付けによる局所的な負荷には非常に脆いです。
硬いパテをボルトの力だけで潰そうとすると、パテが潰れる前に、便器の固定部分が「パキッ」と割れます。
正しいやり方はこうです。
- 位置を決めたら、便器の上にまたがるか、両手を着く。
- 自分の「体重」を真下にかける。
- 「ムギュ〜ッ」という感触と共に、便器がゆっくり沈んでいくのを感じる。
- 便器の底が床に「コツン」と当たるまで押し込む。
ボルトは、床に着いた便器が「動かないように固定するだけ」の役割です。
「体重で潰して、ボルトで留める」。この順番を死守してください。
パテは「硬い粘土」だと思ってください。
指先(ボルト)だけで潰そうとすると大変ですが、手のひら全体(体重)で押せば、形が変わって密着しますよね。
一度潰れた粘土は元に戻らないので、「一度潰したら、もう持ち上げない」のも鉄則です。
3. 最後に「揺すって」確認しないこと
よく心配になって、設置後に便器を左右に揺すって確認する人がいますが、これも危険です。
せっかく密着したパテに隙間ができ、そこから漏水する原因になります。
体重をかけて床に着地させたら、あとは触らずにボルトを締める。これが「一発仕上げ」の極意です。
感覚を「理論」で覚えれば、ミスは消える。
「なんとなく」で作業をしていると、いつか大きなクレームに繋がります。
建-CUBEでは、こうした施工の勘所を動画と理論で徹底的に解説しています。