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鉄管と銅管の直結は数ヶ月で漏水する。電食の仕組みと正しい直し方

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「絶縁継手の手持ちがなくて、とりあえずニップルで繋いでしまった」。現場が立て込んでいる日の夕方、そういう判断をしてしまうことがある。ところが、その「とりあえず」が数ヶ月後に営業中の建物で漏水を起こす。鉄管と銅管の直結は、配管工事のミスの中でも特に後を引く部類のひとつだ。なぜ錆びるのか、外からテープを巻いても意味がない理由、そして後からどう直せばいいかを、順を追って整理する。

水の中で「電池」が起きている

鉄と銅は、電気の通しやすさ(電位)が異なる金属だ。この二つを水に触れた状態で接続すると、目に見えない微弱な電流が発生する。これを「異種金属接触腐食」、現場では「電食」と呼ぶ。

理科の実験で、レモンに鉄と銅の棒を刺して電気を起こしたことを覚えているだろうか。あの仕組みがそのまま配管の中で起きていると思えばいい。電位の低い鉄がイオン化して溶け出し、電位の高い銅を守ろうとする。つまり鉄管側のネジ山だけが削られ続けるのだ。

進行速度は環境によって異なるが、水質が悪い地域や通水量が多い箇所では半年もしないうちに錆が目立ち始める。放置すれば、ある日突然ネジ山がボロボロに崩れて抜けるか、接続部からじわじわと漏水が始まる。気づいたときには壁の中まで水が回っていた、というのが最悪のシナリオだ。

鉄管 銅管 直結部 電流の流れ(水を介して) 溶け出す(腐食) 守られる
鉄管と銅管を直結すると水を介して電流が発生し、鉄管側だけが腐食する
異種金属接触腐食の基礎データ
正式名称
異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)。現場では「電食」と略される。
腐食が起きる条件
電位の異なる金属が、電解質(水)を介して接触していること。
配管での典型例
鉄管(SGP)と銅管の直結。漏水まで数ヶ月〜数年で進行。
腐食が進む側
必ず電位の低い金属(鉄)。銅管側はほとんど傷まない。

外からテープを巻いても止まらない理由

直結に気づいて最初にやりがちなのが、接続部をビニールテープや自己融着テープでぐるぐる巻きにする処置だ。気持ちはわかるが、これは電食に対してまったく効果がない。

腐食を引き起こしている電流は、配管の内側を流れる「水」を伝わって発生している。外側を保護しても、管の中では鉄と銅が接触し、水が通い続けている。電流の回路は内側で完成しているので、外装で遮断できるものは何もない。

もう一つよくある誤解が「シールテープを厚く巻けば間に挟まって絶縁できる」というものだ。ネジ込み部分にシールテープを多めに巻いても、締め込んだ瞬間に金属同士は接触する。シールテープの役割はあくまでネジ山の隙間を埋めてシールすることであって、絶縁材料としての機能はない。

やってはいけない応急処置
  • 外側を絶縁テープ・自己融着テープで巻く(内側の電流には効果なし)
  • シールテープを厚巻きして「絶縁代わり」にする(締め込めば金属接触は起きる)
  • 防錆スプレーを吹いてごまかす(腐食の進行は止まらない)

後から直せる。絶縁ユニオンへの交換手順

すでに繋いでしまっていても、配管全体をやり直す必要はない。接続部の一箇所を切り離して間に絶縁材を挟むことで、電気の回路を断ち切れる。現場での修正コストは早ければ早いほど小さい。

ねじ込み配管の場合

接続部を一度外し、通常のニップルや継手の代わりに「絶縁ユニオン」を入れる。絶縁ユニオンは内部に電気を通さない樹脂パッキンが組み込まれており、金属同士が直接触れない構造になっている。購入するときは製品に「絶縁」と明記されているものを確認すること。外観がよく似た普通のユニオンでは意味がない。

フランジ接続の場合

ボルトとナットの間に「絶縁ワッシャー」と「絶縁スリーブ(筒)」を入れ、フランジ面には「絶縁パッキン」を挟む。これを「絶縁フランジセット」と呼ぶ。注意点として、ボルト一本でも絶縁が抜けると回路が成立してしまうため、全ボルトを確実に処理する必要がある。途中を端折ると施工した意味がなくなる。

絶縁継手を使うメリット
  • 電食の原因を根本から断てる
  • 配管全体をやり直さずに済む
  • 通水前なら短時間で修正できる
注意点・デメリット
  • すでに腐食が進んでいる場合は継手交換だけでは不十分で、傷んだ管ごと交換が必要になる
  • 絶縁ユニオンは通常の継手より割高で、材料手配に時間がかかることがある
  • フランジ接続では全ボルトの絶縁処理が必要で作業量が増える

「一箇所だけ絶縁すれば十分」は必ずしも正しくない

ここが経験者でも見落としがちな落とし穴だ。建物によっては、鉄管系統と銅管系統が複数箇所で接続されていることがある。一箇所に絶縁継手を入れても、別の箇所で金属接触が残っていれば電流の回路は別の経路で成立してしまう。

修正前に、系統全体の接続図を頭に入れておくことが前提になる。改修工事で既設配管に手を入れる場合は特に注意が必要だ。どこで鉄と銅が切り替わっているかを追わないまま一箇所だけ直しても、腐食が再発する。「絶縁継手を入れたのにまた錆びた」という事例のほとんどは、このパターンだ。

「通水前ならまだ間に合う」とよく言うが、もう少し正確に言えば「腐食が始まる前に直す」が正しい。水を流し始めたその瞬間から電食は進行する。

まとめ:面倒でもやり直すのが最も安い選択肢

「今日の現場を終わらせる手間」と「数年後に営業中の建物で漏水が起きて床を剥がす損害」を比べれば、答えは一目瞭然だ。絶縁継手への交換は大工事ではない。接続部一箇所を切り離して、正しい部品に入れ替えるだけだ。

なぜ電食が起きるのかという仕組みを知っていれば、絶縁ユニオンを使う意味も自然と腑に落ちる。手順を暗記するより、原理を理解した方がミスは減る。次に異種金属の配管を繋ぐ場面に出くわしたとき、「とりあえず」ではなく「絶縁材を先に手配する」という判断が自然に出てくるはずだ。

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