鉄管と銅管を直結すると配管が溶ける。絶縁ユニオンを入れるべき理由
リフォーム現場で、ベテランの職人がこんな接続をしているのを見たことがあります。既設の鉄管(ライニング鋼管)に、新しい給湯器の銅管をそのままシールテープだけ巻いてねじ込んでいた。施工直後は水漏れもなく、見た目は完璧でした。ところが数年後、その接続部が壁の中でボロボロに錆び、周囲の木材まで傷めた状態で発見された。単なる寿命ではなく、あの時の直結が「電池」を作っていたのです。
- 正式名称
- ガルバニック腐食(異種金属接触腐食)。現場では「電食(でんしょく)」とも呼ばれます。
- 起きる条件
- 異なる金属が電気的に接触した状態で、水(電解液)が流れること。
- 腐食が進む側
- イオン化傾向が高い、より「溶けやすい」金属。鉄と銅の組み合わせでは鉄が溶ける。
- 進行速度
- 単体での自然腐食より数倍〜数十倍速いとされ、数年で穴が開くケースもある。
なぜ違う金属をつなぐと溶けるのか
中学理科の「ボルタ電池」を思い出してほしいのですが、違う種類の金属を電解液に浸して導線でつなぐと、電気が流れて片方の金属が溶け出します。配管でまったく同じことが起きます。鉄管と銅管を直接ねじ込んで接続した瞬間、金属同士は電気的につながり、その中を流れる水道水が電解液の役割を果たします。
金属にはイオン化傾向、つまり「溶けやすさの順位」があります。鉄は銅よりイオン化傾向が高く、電池で言えばマイナス極側にあたります。この組み合わせで水が流れると、鉄がイオンとして水中に溶け出し、銅側に電子が移動するという反応が継続的に起きます。自然腐食とは違い、電流が流れ続ける限り腐食も止まらない。壁の中で気づかぬうちに進行するのが、この腐食の最も恐ろしいところです。
「シールテープを巻けば大丈夫」は成立しない
現場で新人からよく聞く言い訳があります。「シールテープを巻いているから、金属同士は直接触れていないはずです」というものです。気持ちはわかりますが、これは現場の実態を知らない誤解です。
ネジ山をモンキーレンチで締め込む際、金属のネジ山はシールテープを圧縮・貫通しながらかみ合います。テスターで導通を確認すれば一発でわかりますが、シールテープは水漏れを防ぐためのシール材であって、電気的な絶縁材ではありません。樹脂コーティングされた管であっても、ネジ部でコーティングが削れて金属が露出するため、ネジ接続部における電気的な絶縁をシールテープで達成することは不可能です。
一部の職人が「ライニング管だから内側は樹脂で保護されている」と安心する場面も見てきましたが、腐食は接続部のネジ山から始まります。ライニングが保護しているのは管の内面であって、外径のネジ山周辺ではない点を見落とさないでください。
- 接続部の鉄が数年以内に孔食し、壁内で漏水が発生する
- 腐食生成物が水道水に混入し、赤水クレームにつながる
- 壁を開けるまで発見が遅れ、木材・断熱材への二次被害が広がる
絶縁ユニオンが「プロの分かれ道」になる理由
異種金属を接続しなければならない場面は、リフォーム現場では珍しくありません。既設が鉄管で、新設部分はステンレスや銅管という組み合わせは日常的に出てきます。このとき、電気的な接触を物理的に遮断するのが絶縁継手です。代表的なのは絶縁ユニオンと絶縁フランジで、継手の内部に樹脂製のスリーブやガスケットが入っており、金属同士が直接触れない構造になっています。
絶縁ユニオンは通常のユニオンより単価が高く、現場によっては急な手配が必要なこともあります。「どうせ壁に隠れるし、普通のブッシングでいいか」という判断が出やすい状況です。ただ、その選択が数年後に「壁の中での漏水」という最悪のクレームとして戻ってくる。コスト差は数百円から数千円、クレームの補修費は数十万円では済まないことも多い。
- 異種金属間のガルバニック腐食を根本から遮断できる
- 施工後のメンテナンスコストを大幅に抑えられる
- 図面に記載がない場合でも、提案・採用できれば信頼につながる
- 通常の継手より部材コストが高い(数百〜数千円の差)
- サイズ・形状のバリエーションが限られ、手配に時間がかかる場合がある
- 絶縁部の樹脂が高温・高圧環境では劣化しやすいため、設置箇所の条件確認が必要
落とし穴:絶縁ユニオンを入れても安心できない場合
ここは経験者にしか言いにくい話ですが、絶縁ユニオンを入れたからといって100%安心というわけでもありません。ひとつは、絶縁ユニオンの両側に別の金属配管が共通のサポートや固定金具で接触している場合です。ユニオン本体で絶縁していても、支持金具を介して電気的につながれば腐食は起きます。
もうひとつは、絶縁ユニオンを複数箇所で使う際の「間隔」の問題です。絶縁箇所が近すぎると、配管系全体が電気的にどう分断されているかが不明確になり、思わぬ経路で電流が流れることがあります。絶縁継手は「入れた」で終わりではなく、支持部材・アース経路も含めて系統を確認するのが正しい施工の進め方です。
「なぜ錆びるか」を知らずに施工した配管は、理由もわからずクレームになる。理屈を覚えた職人だけが、次の現場でも同じ間違いを繰り返さない。
現場での判断基準をひとつ持つ
リフォームや改修で既設管に新設管を接続するとき、まず確認すべきことは「この二つの金属の組み合わせは何か」です。鉄(鋼管・ライニング鋼管)と銅、鉄とステンレス、銅とステンレスはいずれも異種金属の組み合わせにあたります。図面に絶縁継手の指示がなくても、材種が異なる接続点では絶縁ユニオンを検討するのが正しい習慣です。
施工後に壁を開けることのない配管ほど、手が届かない場所で腐食は進みます。「見えなくなるから」という理由が手抜きの言い訳になりやすい箇所に限って、後から取り返しのつかないトラブルになる。錆は化学反応であり、条件が揃えば必ず起きます。絶縁ユニオン一本でその条件を崩せるなら、使わない理由はありません。