水圧テストで圧力が下がる本当の原因。エア抜き不足を見抜く3つの確認手順
「1.75MPaまで加圧して、さあ放置」と思って戻ってきたら、ゲージが1.65MPaになっている。慌てて配管を触って回っても、濡れている箇所はどこにもない。こういう場面を、私はこれまで何度も経験してきました。この「見えない圧力低下」の原因は、施工ミスではなく試験方法そのものにあるケースが大半です。
エア残りがなぜ圧力を下げるのか
「水漏れがないなら圧力は下がらないはず」という直感は、正確ではありません。管内に空気が残っていると、まったく別の現象が起きます。水は圧力をかけてもほとんど体積が変わりませんが、空気は圧縮されます。さらに厄介なのは、加圧された環境では空気が水に溶け込んでいくという性質があることです。管内の気泡が加圧された水に少しずつ吸収されていくと、体積が減り、結果としてゲージの数値がじわじわと落ちていきます。
この現象は漏水との見分けがつきにくく、若手が焦る原因になりやすい箇所でもあります。対処は単純で、加圧前に配管の最も高い位置にあるバルブや水栓を開き、気泡を完全に追い出してから試験を始めることです。エア抜きを丁寧にやり直すだけで、同じ配管でもゲージが安定するようになります。
- 配管の最高点にあるバルブ・水栓を全開にする
- 空気がなくなり水だけが出てくるまで待つ
- バルブを閉めてから加圧を開始する
検査機材自体が原因になることがある
配管側は完璧なのに、使っている道具が不良品だったというパターンがあります。手動テストポンプには逆止弁(チェックバルブ)が内蔵されており、ここにゴミが噛み込んでいると、加圧した水がタンク側へ微量に逆流します。量が少ないため目では確認できませんが、ゲージには確実に影響が出ます。
確認する方法はシンプルです。テストポンプの吐出側バルブを閉じた状態で加圧してみてください。それでも圧力が下がるなら、原因は配管ではなくポンプ本体にあります。逆に、その状態で圧力が安定するなら、配管側に疑いが戻ってきます。この切り分けをせずに配管を一からやり直してしまった現場を、私は実際に見ています。道具を疑うことは、遠回りのようで最も確実な診断です。
- 逆止弁にゴミや錆の噛み込みがないか
- 吐出側バルブを閉じて加圧しても圧が下がらないか
水温の変化が引き起こす圧力低下
物理の話になりますが、気体の圧力は温度と連動します。管内の水中に溶け込んだ気体や、わずかに残った空気は、温度が下がると収縮して圧力が落ちます。昼の暖かい時間に水を張り、夕方に気温が下がった状態でゲージを読むと、漏水がなくても数値は低下しています。
逆のケースもあります。直射日光が配管に当たる場所では、試験中に圧力が上がることがある。これを「加圧した」と勘違いして記録してしまうと、後日の判断が狂います。判定は温度が安定した時間帯に行うのが鉄則で、朝一番か日陰で遮光できる環境が理想的です。私の現場では、この条件を外した試験は原則やり直しにしていました。
- 一般的な試験圧力
- 給水配管は最高使用圧力の1.5倍、または1.75MPa(規格・仕様による)
- 保持時間の目安
- 30分〜1時間が一般的。社内基準や設計図書に従う
- 判定基準
- 保持時間中、圧力が規定値を下回らないこと(温度補正を考慮する場合あり)
漏水とエア噛みの「下がり方」の違い
現場で最も使える判断基準は、圧力の「下がり方の形」です。漏水が原因の場合、時間と共にほぼ直線的に下がり続け、止まりません。一方、エア噛みや水温変化が原因の場合、ある程度下がったところで圧力が安定し、それ以上は落ちなくなります。ゲージの動きをグラフのように頭の中で追っていると、この違いが見えてきます。
ただし、例外があります。接合部が金属疲労している場合や、シール材が経年劣化しているケースでは、漏水があるにもかかわらずエア噛みと似た「緩やかな低下で止まる」挙動を示すことがあります。圧力が安定したからといって合格と即断せず、配管全体を目視確認する手間を省かないことが大切です。
試験前に確認する習慣が現場を守る
水圧試験は「結果を見る作業」ではなく「条件を整える作業」です。エア抜きの徹底、ポンプの点検、試験時間帯の選択、この3つを試験前に済ませておくだけで、不要なやり直しと心理的な焦りの大半を防ぐことができます。ゲージが動いても、理屈がわかっていれば次の一手が見えます。焦りを確信に変えるのは、道具でも材料でもなく、現象を読む習慣です。