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ユンボで育った水道屋の息子が、大林組・震災復旧を経て建設DXに挑む理由

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物心ついた頃、私の遊び道具はスコップとパイプ、そして本物のユンボだった。1984年、茨城県で水道屋を営む家の次男として生まれた私にとって、建設現場は日常そのものだった。だからこそ、ずっと気づかなかったことがある。現場を「知っている」ことと、現場で「稼げる」ことは、まったく別の話だということを。

大林組のトンネル現場で15kg落とした話

大学で建設学科を選んだのは、正直なところ「なんとなく」だった。就職先に大林組を選んだのも、同じ理由に近い。配属先はトンネル現場。周囲は旧帝大や有名私大出身のエリートばかりで、私は初日から圧倒された。測量も原価管理も、言葉の意味は知っていても、手が動かない。

転機は、副所長にかけられた一言だった。

「学生と社会人はちゃうんやぞ。給料もらっとんのやから、自分から仕事を探してやらなあかんぞ」

その現場は最初から赤字を抱えていた。余裕のない環境の中で、分からないことを放置する時間などなかった。朝は誰よりも早く出て、夜は最後まで残る。測量・施工計画・原価管理、一つひとつを体で覚えるうちに、気づけば15kgやせていた。数字の上の赤字も、体の上の脂肪も、両方削り落とした現場だった。

代表・軽部の建設キャリア概要
出身
茨城県。父が水道工事業を営む家庭で育つ。
大林組時代
トンネル・土木現場で施工管理を担当。測量から原価管理まで幅広く経験。
家業復帰後
父の会社を継ぎ、水道工事の現場実務・経営を担う。
3.11対応
東日本大震災の震災復旧で、1日最大50件の水道本管修繕を指揮。
現在
株式会社SUMITSUBO AI 代表。東大松尾研発エンジニアと建設DX・AIを開発。

家業に戻って気づいた「現場の非効率」

大林組で数年を過ごした後、私は茨城に戻り、父の会社を継ぐことにした。大手ゼネコンの施工管理と、地元の中小水道業者では、仕事のスケールも段取りも別物だ。それでも、困り方の種類は驚くほど似ていた。人が集まらない。図面と現場が合わない。ベテランが抱えている知識が、若手に伝わらない。

中小の現場では、大林組のような分厚い管理体制はない。一人が測量して、同じ一人が書類を書いて、翌朝また現場に出る。そういう働き方が当たり前だった。非効率だと分かっていても、それを変える時間も余裕も、中小の経営者には簡単に用意できなかった。「仕組みを変えたいが、手が回らない」という状態が、業界全体の構造問題だと実感したのは、この時期だった。

3.11、1日50件の水道本管を直した記憶

2011年3月11日、私は現場にいた。地面が長く揺れた後、事務所の電話が鳴り止まなくなった。水が出ない。道路が割れた。本管が破裂している。水道屋としての判断は早かった。社員全員を呼び集め、その日の夜から復旧作業に入った。

一番多い日で、1日50件の現場を回った。早朝から深夜まで、寒さの中でコンクリートを割り、本管を継いで、水を通す。誰一人「帰りたい」とは言わなかった。職人たちは黙って掘り、黙って直した。あの背中を、私は今でも思い出す。人手不足でも、睡眠不足でも、水道が通った瞬間に住民が見せる顔を励みに、全員が動き続けた。

そしてあの経験は、一つの問いを私の中に残した。これだけ身体を張って働く職人たちが、なぜ非効率な仕組みのせいで消耗しなければならないのか、という問いだ。

震災復旧で痛感した「現場の構造問題」
  • 口頭と手書きだけで回す情報共有は、緊急時に限界を露呈する
  • ベテランの段取り力に頼りきった現場は、そのベテランが倒れた瞬間に止まる
  • 「慣れた方法」を変える余裕が、平時にも緊急時にもない

「現場を知らない人間のシステム」への違和感

震災復旧の後、建設業へのITサービス導入の波が来た。施工管理アプリ、クラウド書類管理、BIMの推進。どれも理屈の上では正しかった。しかし現場に持ち込んでみると、操作が複雑すぎて職人が使わない、システムに入力する時間が逆に増える、という声が絶えなかった。

原因は明快だった。ツールを作った側が、現場の段取りを体で知らないのだ。水道屋の朝が何時に始まるか、職人が1日に何種類の書類を扱うか、現場監督が一人でいくつの案件を同時に追うか。そういう実感を持たない人間が設計したシステムは、どれだけ機能が充実していても現場に根付かない。

その違和感が、私が建設DXに自ら踏み込む理由になった。外から批判するのではなく、現場を知る側が技術を持つ側と組む。私の40年分の現場知見を、東大松尾研究室発のエンジニアたちの技術で形にする。それが、SUMITSUBO AIを立ち上げた動機だった。

「現場知見」と「技術」を組み合わせることの難しさ

ただし、正直に言えば、この組み合わせは簡単ではなかった。現場の言葉とエンジニアの言葉は、同じ日本語でも通じないことがある。「段取りが悪い」という職人の感覚を、データとして定義する作業は、想像以上に時間がかかった。逆に、エンジニア側が提案する「最適化」が、現場の慣習や安全上の制約で使えないケースも何度もあった。

現場知見×AI開発でつまずきやすいポイント
  • 「暗黙知」をデータ化する工程は、現場と開発の双方に根気が要る
  • 現場の「慣習」と「非効率」の区別を、外部エンジニアだけに任せるのは危険
  • ツールの精度より、現場への定着プロセスの設計が先になければ意味がない

ユンボで遊んでいた少年が、大林組のトンネルで15kgやせて、震災の現場で1日50件の本管を直して、今AIの開発に関わっている。振り返れば一本道ではないが、どの場面も「現場」が起点だった。建設業を変えるための道具は変わっても、動かすべき出発点はいつも同じ場所にある。あの震災の夜、黙って掘り続けた職人たちへの思いが、今の私の原動力であることは間違いない。

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株式会社SUMITSUBO AI
Construction × AI

建設業界40年のナレッジ × 東大松尾研究室発のAI開発力。積算DX・図面解析・AI教育(KEN-CUBE)まで、現場の本質的な課題を受託開発で解決するAIソリューションカンパニーです。

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