「糊付け」と思っているから漏れる。塩ビ管接着の正体は『化学溶接』である【漏水の科学】

塩ビ管と継手が溶解して一体化している科学的イメージ

「糊(のり)なんて、くっつけば何でもいいだろ」
「垂れるのが嫌だから、薄く塗ろう」

もしあなたがそう考えて施工しているなら、その配管は将来必ず漏水します。
なぜなら、塩ビ管の接合は、ガムテープやボンドのような「接着(Adhesion)」ではないからです。
あれは科学的に言うと「冷間溶接(Solvent Welding)」なのです。

1. 表面を「溶かして混ぜる」メカニズム

塩ビ用接着剤の成分を見てください。「シクロヘキサノン」などの有機溶剤が含まれています。
これらは、ただのベタベタした液体ではありません。プラスチック(塩ビ)をドロドロに溶かす劇薬です。

🔬 分子レベルで起きていること
  1. 溶解(Melting): 接着剤を塗ると、パイプと継手の表面が溶けて柔らかくなります(膨潤)。
  2. 拡散(Diffusion): 挿入することで、溶けたパイプ側の分子と、継手側の分子が混ざり合います。
  3. 一体化(Fusion): 溶剤が揮発すると、混ざり合った部分が再び固まり、「継ぎ目のない一つの物質」になります。

つまり、糊で貼り合わせているのではなく、お互いの身を削って融合しているのです。

2. なぜ「薄塗り」が命取りになるのか?

「溶接」である以上、表面が十分に溶けていなければ意味がありません。
ここで問題になるのが、継手の「テーパー構造(奥が狭い構造)」です。

パイプを継手に押し込む時、表面の接着剤はどうなるでしょうか?
入り口で削ぎ落とされて、奥まで届かないのです。

⚠️ 糊不足=未溶接

薄く塗っただけの接着剤は、挿入の瞬間にすべて削ぎ落とされます。
その結果、一番重要なパイプの先端付近には溶剤が残らず、「溶けていないプラスチック同士がただ接しているだけ」の状態になります。
これでは水圧に耐えられるはずがありません。

3. 「あふれるほど塗れ」が科学的な正解

削ぎ落とされることを計算に入れれば、答えは一つです。
「削ぎ落とされてもなお、表面に溶剤が残る量」を塗らなければなりません。

挿入後に、継手の根元から接着剤がムニュッとあふれ出ている状態。
あれは「汚い施工」ではなく、「内部の隙間が完全に溶剤で満たされ、空気が押し出された証拠」です。
(もちろん、はみ出した分はすぐに拭き取るのがマナーですが、塗る時は躊躇してはいけません。)

まとめ:糊代(のりしろ)をケチるな

塩ビ管の接着剤は、単なる接着剤ではなく「溶接棒」と同じ役割を果たしています。
「垂れるから薄く」という美学は、漏水のリスクを高めるだけです。
明日からは、親の敵のようにたっぷりと塗り込み、確実に溶かして接合してください。

建-CUBEで「プロの常識」を学ぶ

✅ 漏水を防ぐ施工ルール ✅ 現場の失敗事例集

「感覚」ではなく「論理」で技術を磨きたい。
そんな向上心ある職人のために、役立つ情報を発信しています。
技術相談もLINEで受付中。

友だち追加

※撮影した動画の買取査定もこちらから可能です。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *