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改修現場が暴いた「鹿島品質」の正体と、天野前社長が遺したもの

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壁を剥がした瞬間に、息を呑むことがある。改修工事は、建物の内側を初めて見る仕事だ。数十年前に誰かが丁寧に組んだ鉄筋、寸分も狂わない構造体、見えない部分まで整えられた納まり。その現場で私は思わず独り言を漏らした。「素晴らしい作りだな」と。何が分かるか——仕上がった建物の「品質」は、表面ではなく隠れた部分に宿っている。

改修現場は建物の解剖台である

ある既存建物の改修工事に入ったとき、その建物が数十年前に鹿島建設が施工したものだと図面を見て知った。解体撤去が進むにつれ、構造体が少しずつ姿を現した。配筋のピッチは均一で、コンクリートの打ち継ぎ面は丁寧に処理されていた。設備の貫通部まわりも、後から誰かが手を入れたような粗さがまったくない。

改修工事の難しさは、前の施工者の仕事を「引き継ぐ」ところにある。前の仕事が雑であれば、そのしわ寄せがそのまま現れる。逆に、前の仕事が誠実であれば、後から入る職人も気が引き締まる。あの現場では、後者だった。数十年後の私たちに語りかけてくるような、気概のある仕事の跡がそこにあった。

建設業界18年で、改修現場にはそれなりに入ってきた。施工の良し悪しは、解体してみると如実に分かる。図面通りの数字を満たしているかどうかではなく、その先にある「建物への誠実さ」が滲み出るのが、隠れた部分だ。あの現場は、組織としてその誠実さを維持し続けてきた証拠を見せてくれた。

見えない部分が次の世代への約束になる

現場で職人と話していると、「見えないところをどう仕上げるか」が腕の差だという話が出る。仕上げ材の下に隠れる壁、天井裏の配管の取り回し、スラブ上の断熱材の敷き込み方。完成後に誰かが目にするわけではない。それでも丁寧にやるかどうかが、数十年後の改修現場で答え合わせされる。

鹿島建設のあの現場は、その答え合わせを見事に通過していた。施工した職人たちは、おそらく「数十年後に誰かが解体する」ことを念頭に置いていたわけではないだろう。ただ、目の前の仕事を誠実に終わらせることだけを考えていた。その積み重ねが、組織のDNAとして根付いたのだと私は解釈している。

一つ、注意しておきたいことがある。「大手ゼネコンの施工だから品質が高い」という単純な話ではない。同じ会社の別の現場でも、担当者や下請けの体制によって仕上がりは変わる。あの現場が良かったのは、組織の看板だけでなく、現場を動かした一人ひとりが「見えない部分まで妥協しなかった」からだ。逆に言えば、規模の小さい会社でも、その姿勢さえあれば同じ仕事はできる。

天野前社長が示した「伝統と革新の両立」

鹿島建設の天野裕正社長が急逝された。建設DXを強力に推進しながら、現場の力を誰よりも大切にしてきた方だと、業界18年の肌感覚で感じていた。BIM活用、ICT施工、AIを使った施工管理——デジタルへの投資を積極的に進めながら、それを「現場の誠実さ」の代替手段としてではなく、増幅手段として位置づけていた印象がある。

素晴らしいアナログな技術があるからこそ、デジタルの光が活きる。

この考え方は、あの改修現場で感じたことと重なる。数十年前の職人が残した誠実な仕事があってこそ、今の改修工事が成立する。デジタル技術は、その積み重ねを無効化するものではなく、次の世代へ受け渡す速度と精度を上げるものだ。天野前社長が目指した「誇りを持てる建設業」は、この連続性の上に成り立っていた。

伝統と革新は対立しない。どちらも「次の世代への約束」という一点でつながっている。そのことを、業界全体に示し続けてくださった方だった。

私たちが引き継ぐべき問い

あの現場で感じた「本物の仕事」を、どうやって次の世代へ繋ぐか。技術の継承は、言葉で語るだけでは足りない。実際に手を動かし、隠れた部分を丁寧に仕上げ、その積み重ねを記録し、後から来る人が参照できるかたちにしておく必要がある。そこにデジタル技術の本当の出番がある。

施工の過程を写真と数値で記録し、後の改修時に参照できるようにする。熟練職人の判断をデータとして蓄積し、若手が学べる環境を整える。こうした取り組みは、天野前社長が進めてきた建設DXの方向性とも一致する。私自身が現在取り組んでいることも、その大きな地図の地続きにあると感じている。

建設業界18年で身をもって知ったのは、現場の品質は「見えない部分の誠実さ」で決まるということだ。その誠実さをどう次の世代に渡すか——天野前社長が遺した問いは、答えを出し続けなければならない性質のものだ。天野裕正前社長のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。

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建設業界40年のナレッジ × 東大松尾研究室発のAI開発力。積算DX・図面解析・AI教育(KEN-CUBE)まで、現場の本質的な課題を受託開発で解決するAIソリューションカンパニーです。

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