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現場の空気を知らないAIは異物になる。元大林組の私が「翻訳者」を名乗る理由

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「丁張り」という言葉を、あなたの会社に入ってきたITベンダーの担当者が即座に理解できたでしょうか。朝礼のラジオ体操が終わった後の、あの独特の空気。職人が図面を受け取った瞬間に目の色が変わる、あの感覚。そういうものを知らずに設計されたシステムが、現場でどう扱われるかは、想像に難くないはずです。建設DXが定着しない理由は、技術の問題ではありません。

現場で消えていくシステムに共通すること

建設DXを謳う企業は、この10年で急増しました。施工管理アプリ、写真整理ツール、工程管理システム。どれも機能としては申し分ない。しかし、多くの現場で「使われなくなった」という話を、私は経営者からも職人からも繰り返し聞いてきました。なぜそうなるのか、長い間考え続けてきた答えは、ひとつに収束します。

作った側が「現場の時間の流れ方」を知らないのです。職人は、段取りの合間に手を止めてタブレットを操作することをひどく嫌います。入力フォームの項目数が多いだけで、現場では「使えないもの」の烙印を押される。優秀なプログラマーがどれだけ丁寧にUIを設計しても、現場を3日歩けば見えてくる当たり前のことが、デスクの上では永遠に見えません。

現場の解像度が低いまま設計されたシステムは、技術的に正しくても現場には異物です。異物は排除されます。これが、建設DXが失敗し続けるシンプルな構造です。

私の体が「建設」でできている、という意味

1984年、茨城県の水道屋の次男として生まれた私の遊び道具は、スコップとユンボでした。子どもの頃から現場が日常で、土と機械の匂いの中で育ちました。東日本大震災の時には泥だらけになって水道管を復旧し、大林組ではトンネルや造成の現場で、プロとして働くことの厳しさを骨の髄まで刻み込まれました。

現場監督として積んだ経験は、単なる職歴ではありません。どのタイミングで職人に声をかけるか、どの情報を図面のどこに書けば読んでもらえるか、天候が変わった時に誰が最初に動くか。そういう「暗黙の文法」が、私の中には体験として蓄積されています。これは勉強で得られるものではなく、現場にいた年数が作るものです。

今の私は、東京大学松尾研究室発のAIエンジニア集団とタッグを組んでいます。一見すると水と油のような組み合わせに映るかもしれません。しかし、この組み合わせが機能するのは、私が両方の言語を話せるからです。

軽部治のプロフィール
出身
1984年生まれ、茨城県。水道工事業を営む家庭に育つ。
職歴
大林組にて、トンネル・造成工事の現場監督として従事。現場の施工管理を一線で担う。
現職
株式会社SUMITSUBO AI 代表。東大松尾研究室発のAIエンジニアと協業し、建設業向けAIシステムを開発・提供。

「翻訳者」がいないと、技術は届かない

AIエンジニアは、論理を扱うプロです。入力と出力を定義し、精度を上げ、システムとして動かすことに長けています。しかし「職人が現場写真を撮るのは、報告のためではなく記録のためだ」という感覚的な違いを、言語化せずに伝えることはできません。私の役割は、その「言語化」です。

現場の「あうんの呼吸」や「職人の勘」を、エンジニアが扱えるロジックに変換する。たとえば、配筋検査の写真を整理するシステムを作るなら、「職人はカメラを縦に持つことが多い」「同じ場所を角度を変えて複数枚撮る習慣がある」「夕方の光では影が硬くなり判定が変わる」といった情報を、仕様書に落とし込む必要があります。これを知っているのは、現場に立ち続けた人間だけです。

「現場の言葉」と「エンジニアの言葉」の間には、通訳なしには渡れない川があります。私はその川に橋を架けることを、この仕事の核心だと思っています。
翻訳者として行う具体的な作業
  • 現場のヒアリングで「なんとなく使いにくい」を言語に変換する
  • 職人の動線・習慣・暗黙のルールを仕様書に落とし込む
  • プロトタイプを現場に持ち込み、反応を再びエンジニアに伝える

「現場がわかる」の落とし穴にも気をつける

ここで正直に話しておきたいことがあります。「現場出身だから現場がわかる」という主張は、使い方を誤ると危険です。現場経験は、特定の工種・規模・地域に偏ることがあります。私が経験したのはゼネコンの土木・建築施工管理であり、設備工事や塗装工事の職人が何を面倒に感じるかは、直接経験したわけではありません。

だからこそ、私たちは必ず現場に足を運び、実際の職人と話す時間を設けます。過去の経験はあくまで「仮説を立てる精度」を上げるものであり、現場ごとの検証を省略する理由にはなりません。経験があるほど「わかったつもり」に陥りやすい。これは、現場出身者が持ちやすい盲点です。

「現場出身」が陥りやすい落とし穴
  • 自分の経験した工種・規模だけを「現場の標準」と誤解する
  • 職人の声を聞く前に「こうだろう」と仕様を決めてしまう
  • 現場経験を理由に、現地調査・ヒアリングを省略する

建設現場に「本物」を届けるとはどういうことか

他のIT企業にとって、建設業は参入すべき市場のひとつです。しかし私にとっては、自分が育ち、汗をかき、尊敬する職人たちが今も働いている場所です。そこに中途半端なものを持ち込む気には、どうしてもなれません。

現場の職人が「これは俺たちのために作られたものだ」と感じた瞬間、システムは道具になります。逆に、そう感じてもらえない限り、どんな高性能なシステムも使われない機能の塊です。「元大林組の知見」と「東大松尾研発のAI技術」を掛け合わせる意味は、その瞬間を本物にするためにあります。

建設業界でDXを検討しているなら、まず問うべきことがひとつあります。提案してきた側は、現場の朝7時の空気を知っているか。そこから始まります。

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株式会社SUMITSUBO AI
Construction × AI

建設業界40年のナレッジ × 東大松尾研究室発のAI開発力。積算DX・図面解析・AI教育(KEN-CUBE)まで、現場の本質的な課題を受託開発で解決するAIソリューションカンパニーです。

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