「鉄管に銅管を直結」は絶対NG。配管が勝手に溶け出す「異種金属腐食」の電池現象
リフォームの現場で、こんな光景を見たことはありませんか?
「既設の古い鉄管(ライニング鋼管)に、新しい給湯器の銅管をそのままねじ込んで繋いだ」
施工直後は水漏れもなく、完璧に見えます。
しかし、その接続部分は数年後、ボロボロに錆びて、最悪の場合は破断します。
「古い管だったから寿命でしょ?」
いいえ、違います。それは寿命ではなく、「あなたが繋いだせいで、電池になって溶けた」のです。
今回は、現場で絶対にやってはいけない「異種金属の直結(ガルバニック腐食)」について解説します。
なぜ「違う金属」を繋ぐとダメなのか?
金属には、「イオン化傾向(溶けやすさのランク)」という順位があります。
簡単に言うと、「強い金属(貴な金属)」と「弱い金属(卑な金属)」の相性問題です。
理科の実験で「レモン電池」や「ボルタ電池」を覚えていますか?
違う種類の金属を液体に浸して繋ぐと、電気が流れて片方の金属が溶け出す現象です。
配管でも全く同じことが起きます。
「鉄(弱い金属)」と「銅(強い金属)」を直接繋いで、中に水(電解液)を通すと、そこに微弱な電気が流れます。
その結果、弱いほうの「鉄」が電気分解され、異常なスピードで錆びて溶けていくのです。
「シールテープ巻いてるから大丈夫」は嘘
よく現場で新人が言う言い訳があります。
「でも、シールテープを巻いているから、金属同士は直接触れてませんよね?絶縁できてますよね?」
これは大きな間違いです。
ネジをモンキーレンチで強く締め込んだ時、金属のネジ山はシールテープを突き破って、お互いにガッチリと接触(導通)しています。
テスターで測ればわかりますが、シールテープ程度では電気的な絶縁は不可能なのです。
解決策:「絶縁ユニオン」をサボるな
では、どうしても鉄と銅(またはステンレス)を繋がなければならない時はどうするか。
答えはひとつ。物理的に電気を遮断する「絶縁継手(絶縁ユニオンや絶縁フランジ)」を使うことです。
⚠️ ここがプロの分かれ道
絶縁ユニオンは、普通の継手より値段が高いし、手配も面倒かもしれません。
リフォーム現場などでは「どうせ見えなくなるし、普通のブッシングでいいか」と魔が差すこともあるでしょう。
しかし、その手抜きは数年後に「壁の中での漏水」という最大級のトラブルとなって返ってきます。
異種金属を繋ぐ箇所には、必ず「絶縁」が入っているか。図面になくても、それを見抜いて提案できるのが本物の職人です。
まとめ:サビは「化学反応」である
錆び(腐食)は、単なる経年劣化だけでなく、こうした「電気的な化学反応」によって人工的に引き起こされることも多いのです。
「鉄と銅は混ぜるな危険」。
この鉄則を頭に叩き込んで、10年後もクレームの来ない施工を目指しましょう。